明智光秀をめぐる武将列伝
海音寺潮五郎は、歴史小説家のなかでも、もっとも史実に対する態度が真摯であったといえる。昨年,NHK大河ドラマ「西郷どん」が放送された際には、鹿児島出身であり西郷には並々ならぬ思いを持つ著者の「史伝 西郷隆盛」(文春文庫)が広く読まれた。
大河ドラマの視聴者は、エンターテインメントなドラマを見つつ、その基となる史実を求める気持ちが強い。そのようなニーズに、海音寺潮五郎のオーソドックスな歴史観は相性が良い。
「武将列伝」は、文春文庫の創設期に大きく貢献したシリーズであり、全六巻の構成のなかに、古代から源平、戦国を経て幕末まで、名の知られた武将を一人一編の列伝形式で紹介している。それぞれが、史伝と小説のあいだの絶妙な形式で書かれており、一般読者を飽きさせない。
このなかから、来年の大河ドラマ「麒麟が来る」の主人公・明智光秀と、それを取り巻く武将たちの章を一冊にまとめて特別編とする。タイトルから推察するに、ドラマは光秀を中心に、天下をに覇を競った群雄による群雄劇になるのでは、と考えられるので、ここに登場するであろう人物を選抜する。
現在、武将列伝は新装版(全5巻)があるが、旧版でも新装版でも信長、秀吉と光秀、家康が別れているため、読者が手にしやすい一冊本として再編集する。
海音寺の語る「史実」は、伝統的に事実と考えられている線に沿うものの、随所に作家としての主権的解釈を随所に挟み、一編づつが優れた人物評となっている。「どのような精神の持ち主が、最後に天下を取るにふさわしいか」という歴史観が強く現れている。その意味で、歴史の事実が研究され修正されることがあっても、決して古びるものではない。
加藤清正〈上〉
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